外から見えなくてもゴミ屋敷はきっとそこら中にある
部屋は心の鏡なんだろうと思う。
部屋が片付かないのは片づけない人が悪いんじゃない。
実際にずーっと片付けができない子と言われてきたし自覚があった。
片づけろと言われてもそもそも汚れていると思わない。
でも初めて一人暮らしをしたとき人生で初めて部屋を綺麗にして過ごしたこともある。
要は自分の城じゃなければ、己を守る場所でなければ保てなかったんだ私は。
元々片付けができる人は理解できないだろうけど。
そして、わたしが一週間まえまで過ごした部屋も最初こそ私の立派な城であったのは間違いなかった。
入って早々不穏なことばかりだったのは確かだったけど、それでも自分なりに手入れをして綺麗に直して入るのも躊躇うトイレも居心地よくかえた。
けど一か月たつ頃には騒音に悩み眠れず、帰るたびに虫に悩まされる日々に心労が募るばかりになってついには「ここで過ごすよりホームレス風俗嬢に戻ったほうがマシだ」とまで考えさせた。
私は二年前もう二度とあの生活には戻らない。そう誓った。
「普通に働いて、生活をおくる、高望みもせず慎ましく、静かに過ごせれば他に何もいらない。」
私の願いはそれだけだった。
最初に仕事をもらった時、交代制の4勤2休、残業強制で10時間労働
だけど私は不満一つもらさずむしろ楽し気に毎日過ごしてた。ここが一番クソみたいな人が多くてイラつくこともあったけど私にとっては取るに足らない事だった。
これから数年ゆっくり貯金して年末だけは相方に豪華なプレゼントと自分にご褒美をあげよう。なんて浮かれてた矢先に派遣切りになった。
工場の生産が落ちるからという理由で数百単位で派遣が切られた。
「長く働けますか?」私が派遣の担当に聞いたとき「長い人はもう5年くらい働いてるよ」と、私も沢山働いてこれからまともに過ごせるようにがんばっていこう。
そう希望を抱いて過ごしていたのに。
派遣が次に紹介したのは薄暗い地方のど田舎にある工場だった。
私は言った「家賃は気にしないからできるだけ水回りがきれいなところがいいんです」田舎で水回りがきれいなら新築になるとおもったんだ。
それがリフォームしただけの築30年の一階。物件を見せられた時に血の気が引いた。案の定上の騒音に悩まされ、イライラが募る毎日。坂道がつづく道を毎日毎日必死に自転車をこいで通勤した。
唯一の心やすめの喫煙も自分がきてから派遣先から苦情が増えて全面禁煙になったり。
毎日楽しく過ごしてたはずなのにここにきてから毎日、相方に愚痴しか話さなくなった。それがいちばん辛かった。
腹が立った担当と上の住人にささやかな仕返しをして関東の派遣会社にきた。
仕事先はすごくいいところで労働時間も人も素晴らしくて、今までで働いた中で屈指の職場だった。けど、寮がやっぱりここも最悪で、虫のことを含めたら以前よりもめちゃくちゃ環境が悪くなってしまった。
すごくいいタイミングで電話をもらって物の数日で雇い入れてくれた感謝もあった。
けど、本当に困って相談したのに、困って相談して身体も壊したのに、結局金にならなきゃ何の話も進めてもらえなかった。
そりゃそうだ。
慈善事業じゃない。
わかってる。
でもさ、それはこっちも同じなんだよ。
慈善活動で生きてるわけじゃない。天涯孤独で何も持たない私はなおのこと。
おまえがゴミ屋敷と一言で済ませたあの部屋は私の「城」なるはずだった瓦礫の残骸だったんだよ。おまえたちに見せつけてやりたかったんだよ。どんな生活してたか。
酷い有様だって思ったから、わざわざその余計な一言を言ったんだろう?
慈善事業でも善意のある人間でもないってわかってたから、はっきり言ってよかったよ。これでもまだ身を案じられたりでもしたら申し訳なくて謝りにいってただろう。
無駄な出費が増えずにすべて私の贅沢に使うことができた。
ありがとう。
ねえ、また他人を苦しめてしまったよ。
いつまで続くのかな。きっと生きてる限りそうなんだろう、私は。
質が悪いのはこれでいて私にも罪悪感は一応しっかりあるってこと。
裏切った直前までは「やってしまった、謝りたい気持ちはあるのに」と頭を抱えてうんうん唸ってる。けど、結局どいつもこいつも罵倒してきたり罵ったり、脅したり、必要以上の一言を付け加えて私に「あーやっぱり裏切っても大丈夫なやつらだった」と思わせるだけなんだ。
だからそう思うまではずっとドキドキしてる。
なんて言われるだろう、まさかこの期に及んでも心配してくれたり案じてくれたりするんだろうか・・・でも誰一人としてそんな奴はいなかった。
人生で裏切らないと誓ったのは相方と、中絶がきっかけで別れた恋人の二人だけだった私には。後者は私なんかより別の誰かと幸せになってほしくて結構ひどい振り方をしてしまったけど。本当にいい奴だった。
とても似てるんだよな。
相方は女性だし、元恋人は男だけど。性質が似てて、何よりこんな自分をちゃんと、というか盲目的じゃないかと思うほど大事に思ってくれてたとこも。
わたしは
それがあれば
どこだって生きていくよもう
一生そういう暖かい気持ちが手に入らない人もいる。
それに比べて自分は昔からしょうもなかったけど、家族じゃない人からちゃんと愛してもらえた。
そういう気持ちをただ大事に握りしめて静かに過ごしたかっただけ。
わたしは、
でももう静かに過ごしたいってことも私には贅沢なんだろう。
今まで裏切ってきた奴らからしたら。
だからね、お前らが一生できない生活をこれからは送ってやるんだ。
毎日おいしいもの食べて、毎日部屋が勝手に綺麗になってて快適に過ごせる。
少しだけ働いて平日お前らが必死に会社で仕事してる時間にビールを飲んで、ゲームする毎日。
そうそんな毎日に戻してくれてありがとう。
おまえらが私から平穏を奪うなら、私ももう慎ましい生活なんてしてやらねえよ。
もうゴミ屋敷はつくりません。
でもな、
ずーっと待機室にいたおばさんが忘れられない
あの年で風俗嬢かーって自分も10年後あっちの立場かもしれないって思うからやっぱり稼ぐだけ稼いで城建てたいな・・・w